





品質を守るための選択 ― メゾン・シャルトー
メゾン・シャルトーは、ゲランドの塩業協同組合に属さない、独立した塩職人です。
2016年、同協同組合はゲランド産の塩について名称登録を行い、「IGP(地理的表示保護)」を取得しました。これにより、協同組合に加入していないメゾン・シャルトーの塩は、正式に「ゲランド産」の名称を使用することができなくなりました。
協同組合に加わらなかった理由は、ただひとつ。より良い品質の塩をつくりたい、というシンプルな想いからです。協同組合に加入すると、定められた生産工程に従う必要があります。収穫から袋詰めに至るまで、機械による運搬や濾過、加熱乾燥といった工程が一律に規定されています。
メゾン・シャルトーは、こうした工程では守れない塩本来の質を大切にするため、独立の道を選びました。フルール・ド・セルは、収穫時に白い塩のみを選別し、水切りは自然の力に委ね、2.5mm未満の結晶だけを手作業で選り分けています。その結果、結晶が硬化していない、口どけの良いフルール・ド・セルが生まれます。
グロ・セルも同様に、塩田からアトリエまでの移動や濾過はすべて手作業。不純物を機械で砕くことはせず、一つひとつ丁寧に取り除いています。
ゲランド産のIGP認証は取得していませんが、Maison Charteauならではのこだわりが息づく、高品質な塩をぜひお試しください。

メゾン・シャルトーのこだわり
メゾン・シャルトーが大切にしているのは、「生産量よりも品質を守ること」です。大量生産を目的に、人工的な乾燥によって水分を飛ばすフルール・ド・セルも存在しますが、その方法では塩の粒が硬くなり、品質が安定しません。
ラ・メゾン・シャルトーでは、収穫後のフルール・ド・セルを1年以上かけて、自然の力だけでゆっくりと乾燥させます。リオネル・シャルトーは、「最高のフルール・ド・セルとは、辛みがなく、マイルドで口溶けのよい、やさしい味わいの塩です」と語ります。
ブルターニュ地方の太陽、大西洋のそよ風、ゲランドの海水、そして職人の手仕事。そのすべてが結実した、100%天然の結晶塩です。
特徴
最大の特徴は、食材のうま味や甘みを驚くほど引き立てること。料理の仕上げに使えば、たとえばカプレーゼには欠かせませんし、用途を選ばず幅広く使えます。和食との相性も抜群で、天ぷらや蒸し野菜にも最適です。
フルール・ド・セルで握ったおにぎりは、米本来のうま味が際立つのを実感できるでしょう。口の中でやさしく溶け、塩辛さが前に出ないため、素材の魅力を最大限に引き出してくれる――まさに、魔法のような塩です。
フルールドセルができるまで

夏の午後、暖かな微風と結晶池の水面とのあいだに十分な温度差が生まれると、水面に繊細な結晶が現れます。それがフルール・ド・セルです。
6月下旬から7月上旬にかけて、暑さによって結晶池の水温は上がり、蒸発が進みます。午後3時を過ぎる頃、東から西へと吹く風が立ち始めると、塩の結晶が静かに形成されていきます。ゆっくりと生まれる結晶はほとんど動かず、池の縁には白く染まった部分が現れます。これがフルール・ド・セルです。

午後6時頃になると、結晶は一気に増え、まるで花が満開になるかのように水面を覆います。この瞬間を逃さず収穫を始め、夜10時までに作業を終えなければなりません。夜の湿気によってフルール・ド・セルは池の底に沈んでしまうためです。沈んだ塩は、グロ・セル(大粒塩)として収穫されます。

収穫には「ルース」と呼ばれる、棒の先に平たい板が付いた道具を使います。この作業は非常に繊細で、高い熟練を要します。結晶池の水深はわずか1〜2センチほど。底に触れてしまうと、それまでにすくい取った塩はすべて使えなくなってしまいます。真っ白なフルール・ド・セルだけを選り分けるため、この工程はとりわけ重要です。

ルースの棒の長さは約3メートル。先端には最大で2キロものフルール・ド・セルの重みがかかります。その扱いの難しさは想像に難くありません。ルースがいっぱいになると、塩はプラスチック製の一輪車に集められ、朝方まで水を切った後、作業場へと運ばれます。

完全に水分を抜くまでには、実に1年を要します。その後、不純物を丁寧に取り除きながら、2.5ミリ未満の結晶のみを手作業で選別します。
まさに、塩職人の技と経験が生み出す結晶です。
フランスには、100%自然の力によって生まれる天日塩があります。その主な生産地は、大西洋側のゲランドと地中海側のカマルグで、いずれも良質な天日塩を育む湿地帯として知られています。
一方、日本の塩は、海水を煮詰める、あるいは輸入した天日塩を溶かして再び炊き直した精製塩が主流です。日本は降水量が多く、塩田で海水を蒸発させて天日塩を大量生産することが難しいため、このような製法が発達したといわれています。
それぞれに用途はありますが、とりわけフランスの結晶塩「フルール・ド・セル」は、素材のうま味を引き出し、料理に奥行きを与える力において、他には代えがたい存在です。各方面から高品質として評価されているフルール・ド・セルを生産する〈ラ・メゾン・シャルトー〉を中心に、フランスの塩についてご紹介します。
ゲランドの3種類の塩
ロワール・アトランティック地方に広がるゲランドの塩田は、空から見ると、水路と四角い池が織りなすモザイク画のような美しさだといわれます。
6月中旬から9月中旬にかけては塩の収穫期。この時期、Paludier(パルディエ)と呼ばれる塩職人たちは、日々塩田に向かい、黙々と収穫作業を行います。
フランスの塩として広く知られているのは「ゲランドの塩」や「カマルグの塩」ですが、主に以下の3種類に分類されます。
・グロ・セル(Gros Sel):粗い塩
・セル・ファン(Sel fin):細かい塩
・フルール・ド・セル(Fleur de sel):塩の花

グロ・セル(粗い塩)
塩田の端にある塩堆場「ラデュール」に向かって、水とともにグロ・セルを押し出す作業は、技術・体力・正確さを要します。やがて写真で見るような、こんもりとしたグロ・セルの山が築かれます。
グロ・セルは基本的に食卓塩ではなく、野菜や豆類、パスタなどを茹でる際のお湯に加える調理用の塩です。粒が大きいため溶ける速度が遅く、素材にゆっくりと塩味が浸透します。また、肉や魚を塩で包んで焼く「塩釜焼き」にも使われます。一度に使う量が多いため、500gや1kg単位で販売されるのが一般的です。
パリのカフェでは、スポンジで洗えないボトルや水差しの内部を洗う際に、グロ・セルが使われることもあります。瓶にグロ・セルと業務用ビネガー、水を入れて振ることで、内側のくもりを落とすのです。昼前のカフェカウンターで、そんな光景に出会うこともあるかもしれません。
セル・ファン(細かい塩)
セル・ファンは、調理用にも食卓用にも使える万能な塩です。収穫後、自然の力だけで水分を切ったグロ・セルを細かく砕き、さらさらとした状態に仕上げています。焼き料理や煮込み料理など、日常の味付けに幅広く活躍します。
地中海側のカマルグの塩は精製しなくても真っ白ですが、大西洋側のゲランドの塩は、塩田の土壌が粘土質であるため、やや灰色を帯びています。この色合いから「セル・グリ(Sel gris/灰色の塩)」とも呼ばれ、グロ・セルも同様に「グロ・セル・グリ」と表記されることがあります。

フルール・ド・セル(塩の花)
最も希少価値が高いのがフルール・ド・セルです。収穫には高度な技術が求められ、しかもごくわずかしか採れない、非常に貴重な結晶塩です。
収穫は、Œillet(ウイエ)と呼ばれる「結晶池」で行われ、ルースという扱いの難しい道具を使います。一定の気象条件と海水の塩分濃度が揃わなければ、水面に結晶は生まれません。さらに、収穫時には水面を揺らさぬよう、表面に浮かぶ結晶だけをすくい取る必要があります。
海水から咲く「塩の花」
通常、海水1リットルに含まれる塩分は30〜35g、濃度にして約3.5%です。しかし、フルール・ド・セルが水面で結晶化するためには、1リットルあたり約280g、つまり28%もの塩分濃度が必要になります。そのためには、太陽の熱による水分の蒸発しか方法がありません。
海水はまず「ヴァジエール」と呼ばれる貯水池に貯められ、ここで塩分が濃縮され、不純物や泥が分離されます。その後、「コビエ」と呼ばれる濃縮池を通り、地形の高低差を利用して塩田へと送られ、最終的に結晶池へと流れ込みます。こうして塩分濃度を高めた海水が、海風に吹かれることで水面に結晶し、「塩の花」が咲くのです。


