ゲランドの塩

ゲランドの塩

フランスの塩

フランスには100%自然の力で生まれる天日塩があります。その生産地のほとんどは大西洋側のゲランドか地中海側のカマルグであり、良質の天日塩ができる湿地帯として知られています。一方で日本の塩は、基本的にすべての塩が海水を煮詰める、または輸入した天日塩を溶かして炊き直した精製塩です。これは、日本は雨が多く塩田で海水を蒸発させて作る天日塩を量産することができないためのようです。それぞれに使い道がありますが、とりわけフランスの結晶塩「フルール・ド・セル」の素材のうま味を引き出す力、料理に奥行きを与える力はフランスの天日塩にしか出せない力があると思います。各方面から高い品質として認められているフルール・ド・セルを生産するラ・メゾン・シャルトーの紹介を中心に、フランスの塩についてご説明します。

ゲランドの3種類の塩

ロワール・アトランティック地方のゲランドの塩田は、空から見ると水路と四角い池が織り成すモザイク画のように美しいそうです。6月中旬〜9月中旬は塩の収穫の真っ只中で、この時期にPaludier(パルディエ)と言われる塩職人はせっせと塩の収穫に取りかかります。
フランスの塩で有名なのが「ゲランドの塩」や「カマルグの塩」ですが、主に3種類 「グロ・セル(Gros Sel)=粗い塩」、「セル・ファン(Sel fin)=細かい塩」、「フルール・ド・セル(Fleur de sel)=塩の花」に分類されます。

--- グロ・セル ---

各塩田の端に塩を盛り上げておく塩堆場「ラデュール」に向かって水とグロ・セルを押し出します。技術・体力・正確性を必要とする作業で、やがて写真のようにこんもりとしたグロ・セルの山となります。基本的に食卓に並ぶことはなく、野菜・豆類・パスタ等を茹でる時のお湯に加える調理用の塩です。グロ・セルの粒は大きいためにお湯の中でゆっくり溶けるので、茹でている素材にもゆっくり塩分が染み込むのです。また、お肉やお魚を塩に包んで焼く料理「塩釜焼き」に使う塩もグロ・セルです。通常、一度に使う分量が他の塩に比べて多いので、500gや1kgの単位で売られています。

パリのカフェではボトルや水差し等スポンジでは洗えない容器の内部を洗う際、グロ・セルを使って掃除をしています。ビンにグロ・セル、業務用ビネガー、水を入れてしっかり振ると内部のくもりが取れてきれいになります。お昼前にカフェのカウンターでコーヒーを飲んでいると、この様子が見られるかもしれません。
--- セル・ファン ---

調理用でも食卓用でも両方に使える万能な塩です。収穫後、自然の力だけで水分を切ったグロ・セルを細かく砕き、さらさらとした状態にした塩です。焼き料理にも煮込み料理にも基本の味付けの役割を果たしてくれます。カマルグを代表とする地中海の塩は精製しなくても真っ白な色をしていますが、大西洋側のゲランドの塩は塩田の土質が粘土質のために少し灰色がかっています。この見た目から「セル・グリ(Sel gris)=灰色の塩」と言われています。塩の色に関してはグロ・セルでも同様で、たとえば商品名では「グロ・セル・グリ(Le gros sel gris)」などと呼ばれます。
--- フルール・ド・セル ---

最も希少価値の高い「フルール・ド・セル」は、収穫に熟練の技術を必要とするだけでなく、ごく少量しか収穫できない貴重な結晶塩です。収穫にはルースと呼ばれる扱いが難しい道具を使い、Œillet(ウイエ)と呼ばれる「結晶池」で収穫されます。フルール・ド・セルは、一定の気象条件と海水の塩分濃度が揃わないと水面に結晶化されず、しかも収穫の際には水を揺さぶることなく表面の結晶塩だけをすくわなければなりません。
--- 海水から咲く塩の花 ---
通常、海水1リットルには30〜35グラムの塩が含まれ、塩分濃度は3.5%と言われています。しかし、「結晶池」でフルール・ド・セルが海面で結晶化するには1リットル当たり280グラムが必要、つまり28%の塩分濃度にしなければなりません。それには太陽の熱による水分の蒸発しかありません。そのために、結晶池に入ってくる海水には数段階の工程を踏んでいます。
最初に海水は「Vasière(ヴァジエール)」と言う貯水池に貯められます。深さ15cm〜20cmの貯水池にて塩分の凝縮が始まり、不純物や泥などはここで分離されます。その後、「Cobier(コビエ)」と言う濃縮池を通り塩田へと高低差を利用して供給され、さらに工程を経て最終的に結晶池へと流れ込みます。これにより海水の塩分濃度が高まり、海風に吹かれることで水面が結晶化して、「塩の花」が咲きます。
参考:SAVEURS N°213, LE NATURSEL, 他
 
--- ラ・メゾン・シャルトーのフルール・ド・セル ---

ラ・メゾン・シャルトーが大切にしていることは「生産量を上げることよりも品質を守ること」とのことです。大手企業が生産するフルール・ド・セルの中には、人工的に乾燥させることで生産量を上げていることもあるようです。しかし、自然の力以外の方法で水分を蒸発させると塩の粒が固くなることがあり安定した品質になりません。
ラ・メゾン・シャルトーでは、フルール・ド・セルは収穫した後、1年以上もかけてゆっくりと水分を取り除いていきます。リオネル・シャルトーは「最高のフルール・ド・セルは、塩の辛みのないマイルドで口溶けのよい優しい味わい」と話します。ラ・メゾン・シャルトーのフルール・ド・セルは、ブルターニュ地方の太陽、大西洋のそよ風、ゲランドの海水、職人の手による収穫技術が生んだ100%天然の結晶塩です。

 

--- 特徴 ---
一番の特徴は、食材のうまみや甘みを最大限に引き立てることです。料理の仕上げに使い、たとえば「カプレーゼ」には欠かせませんし、その他何にでも使えます。和食との相性も抜群で、天ぷらや蒸し野菜等に大活躍します。おにぎりをフルール・ド・セルで握ると、お米のうまみがぐっと引き立つのがよく分かると思います。口の中で溶けやすく、同時に塩っ辛さを感じることがないために、食材のうまみや甘みを最大限に引き立ててくれる魔法のような塩です。